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治療体験談(6)

成長ホルモン治療で、僕の人生が変わった

~体と心を救ってくれた先生との出会い~
N.W.さん(男性 30歳代)

監修:村上 雅子 先生(静岡赤十字病院 糖尿病・内分泌代謝科)

19歳のときに下垂体腫瘍の摘出手術を受けたN.W. さんは、術後も体調が悪い日が続き、社会生活を行うことが困難になりました。周りからは理解してもらえず、ひとりで耐える日々が続きました。そんなときに村上先生と出会って、適切な治療にたどり着き、仕事ができるまでに回復しました。いまでは夢に向かって充実した毎日を過ごされています。

-成長ホルモン治療を始める前は、どのような生活だったのでしょうか?

 19歳のときに下垂体腫瘍の摘出手術をしたのですが、手術後もめまいや吐き気で毎日ほとんど寝ていました。ずっと熱があるような倦怠感が続いて、少し動いただけでも、すぐに疲れてしまうのです。そんな状態でしたから、就職する自信も持てませんでした。友達はみな社会人でしたし、僕だけが仕事をしていなくて「そこそこの年齢になっても、何もしていない、できない」「たださぼっているだけだ」という冷たい目で見られて、本当につらかったです。
 ひどい頭痛とめまいで何度も救急車で病院に行きましたが、こんなに苦しいのに「この眼鏡が合わないからじゃないの?」とまで言われたこともありました。両親ですら病気のことを理解できず、世の中の誰からも理解してもらえなくて、「自分はダメな人間だ。何でこんなふうになってしまったのだろう」と、悔しくてたまらない気持ちでした。

-どのような経緯で、成長ホルモン治療を始めることになったのですか?

 脳神経外科から内分泌代謝科の村上先生を紹介されました。そのとき、村上先生だけが「つらかったわね、よく頑張ったわね」と言ってくれました。僕はそのときのことを忘れません。本当につらかった中でやっと理解してくれる唯一の人に出会えたのです。
 先生からいただいた成人成長ホルモン分泌不全症のパンフレットには、倦怠感、めまい、精神的落ち込み、マイナス思考などの症状があって、すべて自分に当てはまりました。注射は怖いし、これからずっと注射を続けていかなくてはならないのかという気持ちはありましたが、それよりも変わりたいという気持ちが強かったです。少しでもよくなるなら、それで人生が変わるのなら、何でもしたい。そういう気持ちで治療を始めました。ちょうどそのころ、両親がやっている飲食店を継ぐ、継がないという話が出ていて、この治療を機に店を継ごうと決心しました。

-治療を始めて、変化は感じられましたか?

 治療前はひげもはえてこないし、皮膚もボロボロ、髪の毛もすごく細くなっていましたが、ひげも伸びるし、皮膚の状態もよくなってきました。筋トレすると筋肉もついてきて体も引き締まってきたのがわかりました。朝から晩まで働くこともできるようになりました。
 何よりも、僕には精神面の変化が一番大きいと思います。病気でマイナスから始まりましたが、同年代の人たちを追い抜いてやろうという気持ちになりました。夢を持って、この仕事で成り上がろうという強い気持ちでここまでやってきました。いまでは両親も病気のことを理解して、「正直、お前がここまでやるとは思わなかった」と認めてくれたときには、すべてが報われたような気がしました。

-今後の夢はありますか?また、同じ病気の患者さんにメッセージがありましたらお願いします。

 僕はこれからも一生懸命仕事をして、自分の責任の中でかっこよく生きていきたいです。仕事で成果を上げて、両親が営んできた店を長く続けていきたいと思っています。ずっと誰にも理解されず、世の中に必要とされていないのでは?と思うほどのつらい経験もしました。でもやっと本来の自分の体に戻ってきて、人生が変わったのです。もし同じ病気で悩んでいる人がいるなら、注射をするだけで人生が変わるのだから、絶対この治療をするべきですと説得したいです。

主治医のコメント

 N.W.さんは、下垂体腫瘍を摘出された後、何年にもわたって下垂体機能の評価や診断治療もされることなく経過していました。当科を紹介されるまでは、下垂体ホルモン欠乏が原因で生じる強い倦怠感などの症状を訴えても、適切に「下垂体機能低下症」と診断治療されることもなく、苦しい経過をとっておられました。脳神経外科からの紹介で私どもを受診されたときには、下垂体のどのホルモンもほぼ無い状態でしたので、私には「ホルモン欠乏状態」で苦しい長期間を耐えてこられたことが充分理解できました。
現在、下垂体機能低下症患者の中には、ホルモン欠乏状態自体がしっかりと診断すらされず、適切なホルモン補充治療を受けることもなく、つらい生活をしている方が、いまなお少なく無いと考えられます。
この治療体験談により、下垂体の病気をした患者さん達が、一人でも多く適切な診断と治療を受け、回復されるきっかけとなれば幸いと考えます。

監修:村上 雅子 先生
静岡赤十字病院 糖尿病・内分泌代謝科

*患者さん用のパンフレットより掲載致しました。掲載記事の内容は、一人の患者さんの体験談であり、すべての患者さんに同じ効果を示すわけではございません。