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治療体験談(10)

将来の夢に向かって、がんばる姿を見ていてください

M.I.さん(女性 10歳代)と お母さん

監修:安達 昌功 先生(神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科)

M.I.さんは小学1年生のときに頭蓋咽頭腫という脳腫瘍を発症しました。その治療として下垂体を摘出したので、下垂体でつくられるすべてのホルモンを補充しています。成長ホルモン治療は小学2年生から始めて、いまは小児期から成人期に移行して、治療を続けています。今年、高校卒業後の進路が決まって、看護学校に進学することになりました。入学直前のM.I.さんとお母さんにお話をうかがいました。

-小児期からずっと成長ホルモン治療を続けていらっしゃいますが、成人の治療に移行して変わったことはありますか?

[お母さん]
 治療を始めたころにくらべると、注射の針がだんだん細くなって負担が軽くなりました。子どものころはチクッとして場所によっては痛いようでした。いまは太ももの付け根に打っていますが、まったく痛くないと言っています。注入器も進化してきたので、10年後にはどう変わっているのか、かなり期待しています。

-ご自分で注射することに対して、抵抗感や不安はありませんでしたか?

[M.I.さん]
 最初はすごく抵抗があったと思うのですが、もう慣れました。痛みもないし、「嫌だな」とか「やりたくない」と感じたことはありません。ただ、注射を休んでしまうと体調が崩れてしまうかもしれないと思い込んでいるせいか、数日間注射をしなかったりすると、すごく不安になります。うっかり忘れて寝てしまうこともありますから(笑)。

-治療を続けながらの受験勉強は大変だったと思います。体調面で何か気をつけたことはありますか?

[M.I.さん]
 高校の3年間は夢中で勉強しました。日々の努力が大事だと思って、クラス順位が上がるようにテストもがんばりました。あまり体調が崩れることもなかったので、体調管理で特に気をつけたことはありません。友達は徹夜で勉強していたようですが、次の日に体調を崩すのが嫌だったので、睡眠だけはとっておこうと気をつけたくらいです。  いま薬局でアルバイトをしていますが、5時間休憩なしで働いているので、その間の水分補給*が難しいです。先生にご指導いただいたように事前に水分補給をして、薬も持参して気をつけています。それが一番大変です。

* M.I.さんは下垂体を摘出したため尿崩症(抗利尿ホルモン分泌異常症)にもなりました。
  そのため外出するときはいつもお茶と尿崩症の薬を持参して、水分の調整をしています。

-看護学校で勉強することに、不安や期待はありますか? 将来は、何科の看護師さんになりたいですか?

[M.I.さん]
 看護学校での授業は実習もあって長時間になるので、体調管理や水分の調整が必要になります。そのあたりは不安です。でも、医療関係や看護師の仕事にすごく興味があったので、これから深く学べることが楽しみです。体についても勉強していくので、自分の状態はこうなのかな?と照らし合わせてみることもできると思います。小児科や子ども医療の看護師に興味があります。これから3年間勉強して国家資格を取らなくてはなりません。実習では、注射をしたり、手術室にも入ります。大変そうですけど、慣れていくのかなと思っています(笑)。

-これから治療を始める患者さんに伝えたいことはありますか?

[M.I.さん]
 治療をしなくてはならないのに、注射が嫌で迷っている人がいたら、「痛くないよ。体調がよくなるよ」ということを知ってもらいたいです。
[お母さん]
 昔の人は大変な苦労をされたと思います。薬が何も無いときは、治療ができなくて、つらい思いをされていたのでしょう。薬が開発されたおかげで、娘はこんなに元気でいられて本当にありがたいです。私は「小児脳腫瘍の会」の仕事もしていますが、その中には成長ホルモン治療を始めて、体調が劇的に変わった人や気持ちも前向きになったという人もたくさんいらっしゃいます。いまは、男女ともに体格の大きさも大切な時代で、体型が変わるということも重要なことだと思います。身長が伸び小児期の治療が終わったら治療をやめてしまう人や、成人の治療がなかなか続かない人もいると聞きますが、成長ホルモンはとても大切だということ、その重要性をもっとわかっていただけるといいですね。

M.I.さんとお母さん(ご本人の許可を頂いて掲載しております)

主治医のコメント

 脳腫瘍とその後の内分泌の問題と付き合いながら成長していくのが、どれくらい大変なのかは、ご本人でなければわからないことかもしれません。M.I.さんはお母さんと一緒に、病気から逃げることなくしっかり立ち向かい、看護師をめざしての第一歩を踏み出されました。これまでのご本人の努力に、大きな拍手を送りたいと思います。これから学校での勉強や実習に励む一方で、親離れも必要になってくるでしょう。M.I.さんは、まじめ一筋ではなく、おおらかな所もあり、「この薬は面倒だから、いまは使っていません」という発言もあるくらいの大物なので(笑)、私はとても期待しています。

監修:安達 昌功 先生
神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科

*患者さん用のパンフレットより掲載致しました。掲載記事の内容は、一人の患者さんの体験談であり、すべての患者さんに同じ効果を示すわけではございません。